『プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』を読み終えました。
本書は、マーケットリーという架空の企業を通して、プロダクトマネジメントにおける落とし穴を、どのような方法で回避していくことができるかについて、記されています。
戦略、プロセス、組織といったいろいろな角度から述べられており、プロダクトの責任者をされていらっしゃる方だけでなく、経営層の方にも、ぜひ読んでいただきたい内容となっています。
プロダクトマネジメントに記された非常に良い書籍ですので、私が気になったところを紹介させていただきます。
ビルドトラップとは
ビルドトラップは、以下のように定義されています。
ビルドトラップとは、組織がアウトカムではなくアウトプットで成功を計測しようとしていて、行き詰まっている状況のことです。
アウトプットとは、プロダクトの数、リリースした機能数、リリース回数、開発チームのベロシティなどとされています。
アウトカムとは、機能を届けて顧客の問題を解決した結果のことです。 具体例としては、アクイジション、リテンション、収益、顧客の解約などがあります。
私の過去の失敗経験からも、機能、リリース回数、ベロシティが改善されているから、うまくいっていると思っていたことがあります。まさに、ビルドトラップにハマっていたといえます。
アウトカムについて詳しく知りたい方は、ぜひ下記のOutcome Deliveryについて詳しいGabrielle Benefieldさんの動画を御覧ください。
プロダクトをどう捉えるか
本書では、プロダクト自体に価値はないといっており、自社のビジネス価値と顧客にとっての価値を交換する媒介であるとしています。
そのため、価値をプロダクト自体にあると勘違いしていると、機能数などアウトプットを成功の指針としてしまう言っています。
プロダクト自体に価値を感じてしまうことは、人間誰しもあるかと、僕は感じています。
開発者であればソフトウェアそのものですし、営業であれば提案資料、カスタマーサポートであればメール文面など、プロダクトに関するものを作っていると思います。
だからこそ、「せっかく時間をかけて作ったのだから」、「プロダクトは自分の分身だ」と感じるのだと思います。
各個人が上記のように感じることとは別に、「顧客にとってプロダクトとは、どのような存在であるのか?」を改めて企業で定義していくことが大事だと感じています。
優れたプロダクトマネージャーと悪いプロダクトマネージャー
本書ではプロダクトマネージャーの重要性や、どのような役割を果たすべきかについて、詳しく示しています。
逆に、どのようなプロダクトマネージャーは悪いのかも示しています。
典型例として、
- ミニCEO
- ウェイター
- プロジェクトマネージャーだった人
をアンチパターンとしています。
優れたプロダクトマネージャーは「なぜ」を顧客やステークホルダーや開発者に聞き、ビジネス目標と顧客が実現したい価値を達成することが大事とされています。
プロダクトのなぜを考えるためにオススメなのが、サイモン・シネックの『WHYから始めよ! 』です。書籍も素晴らしいですが、20分程度のTEDがあるので、まずは動画を視聴するのをおすすめします。
プロダクト戦略
戦略というと、将来プロダクトがどうなっていてほしいのか、自社が市場においてどういうポジションであるかがイメージしやすいです。
もちろん、本書でもビジョンの大切さが語られています。
個人的に大事だなと感じた文言は、戦略的意図で、ジョシュア・アーノルドによる価値検討フレームワークについて書かれていたことでした。
価値検討フレームワークの内容は以下です。
- 収益を増やす
- 収益を守る
- コストを減らす
- コストを避ける
お金に関することは企業を運営していく上で避けて通れません。特にプロダクトの責任者であれば、必ず考える必要があります。
今取り組もうとしていることが、どれを選択しているのか?、偏ってないか?、は検討したいです。
特にサブスクリプションモデルが通例になってきた世の中においては、収益を守る観点は重要だと、個人的に考えています。
サブスクリプションモデルは一度に得られる金額が少ないからこそ、リテンションが重要だと考えています。
プロダクト主導組織
いくらよいプロダクトを作ろうとしても、組織の評価軸が適切でなければ、結果的にユーザーに利用されないプロダクトを作り続けることになります。
本書においても、コダックの組織決定スピードの遅さによる没落事例、ボーナスを貰うために一ヶ月無駄にしている事例、予算を使い切ることが第一になっている事例が記されています。
特に後者2つの事例は、アウトカムではなくアウトプットを計測対象にしているからこそ、起きてしまっている事例です。
これらを解決するには、「ビジネスとしてプロダクトが成り立っているのか?」に関する指標が大事だと考えています。
指標としては、以下が代表例だと思います。
- 利益は確保できているのか?
- 売上は増えているのか?
- ユーザーは増えているのか?
- 流入ユーザーは解約ユーザーより多いのか?
チームが継続するには、チームビルディング、プロジェクトではなくプロダクトにチームを割り当てるも大事ですが、そもそもプロダクトが継続的に利益をもたらす必要があると思っています。
だからこそ、組織、特に経営層が、プロダクトをどう評価するかを考える必要があると思います。
おわりに
本書は、 株式会社アトラクタ 様から頂戴いたしました。
大変感謝しております。
スクラムにおいても「プロダクトオーナーをどのように育てるのか?」は、関心事の強い内容だと思います。
本書は、プロダクトオーナーが幅を広げるために必要なことが数多く記載されており、ぜひ読んでいただきたいと思います!
プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
- 作者:Melissa Perri
- 発売日: 2020/10/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:サイモン・シネック
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: 単行本
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
- 作者:ニック・メータ,ダン・スタインマン,リンカーン・マーフィー
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: Kindle版